歴史2
全国的に珍しい
史跡財産・屋根神さまが守る「エキ・シロ」
屋根の上に祀られた地域の守り神
「屋根神さま」をめぐって散策しよう
名古屋市域の古い民家には全国的にも珍しい屋根神さまが祀られています。屋根神さまとは屋根の上にある小さな社のこと。そこに住まう人々が病気や大火を防ぎ、まちや人々の平穏無事を願って祀られました。
西区にはその約半数が集まっています。今では屋根の上だけでなく、家の横の壁や塀の上など、さまざまな場所にある個性あふれる屋根神さまを、社寺などの史跡散策とあわせてめぐることができます。
屋根神さまが屋根の上という珍しい場所に祀られたのは、当時の人々の生活の知恵からでした。住居が連なる長屋が一般的だったことから、社を建てる土地がなかったのです。もともと、名古屋で屋根神さまが祀られはじめたのは明治時代のこと。最も多いのが明治30~40年ごろで、大正~昭和初期のものも多数あります。
多くの屋根神さまには、津島神社、秋葉神社、熱田神宮の三神が祀られています。そこには、当時の人々の切なる願いが込められています。
明治維新以降、外国との交易が盛んになったことから、コレラや天然痘などの伝染病が流行。そこで、疫病を防ぐために天王信仰で有名な津島神社が祀られました。今でも津島神社が主神のものが多く、「天王さま」と呼ばれ親しまれています。
また、住居が密集していたことから、人々はたびたび火災の被害に苦しみました。火事を防ぐため、火ぶせの神・秋葉神社も祀られました。戦火が激しくなると、出征する兵士の無事を祈って熱田神宮を祀ったといわれています。
毎月1・15日には提灯が掲げられます
住居の屋根の上にある屋根神さまは、人々の暮らしのすぐそばにありました。常にお参りすることができる身近な神さまとして、長い間、まちの人々を守ってきました。今でも毎月1日・15日の月次祭には提灯が飾られ、地域の人々の信仰を集めています。一方、道路の拡張や建物の建て替えなどから、屋根から下ろして祀られているものや、残念ながら消失してしまったものもあります。
屋根神さまは西区の各地にあります。そのため、社寺などの史跡や観光スポットと一緒にめぐることができるのも魅力です。そのひとつの四間道周辺は、江戸時代の商人町の風情が残る一帯。古い蔵や町家が立ち並び、そこに鎮座する屋根神さまや、浅間神社、金刀比羅社、圓頓寺などの由緒ある社寺、子守地蔵尊などが点在しています。のんびり散策しながら、深い歴史や当時の人々の信仰に思いを馳せてみてはどうでしょうか。